夢見る医者は オペ室に眠る

あれは最高のおっぱい

深い眠り

深夜の吐血対応は、修羅場になる事が多い。
あっという間にショックバイタルになるので、
全開の輸液・輸血、同時に緊急内視鏡をやる。
床とスタッフは血まみれ、その場はまさに戦場のようになる。

そっと胃カメラを入れると、胃の中は血の海。
だから、どこから出血しているかはわからない。
吸引しても吸引しても、底から血が湧いてくる。
次第に血圧が下がってきて、患者も朦朧としてくる。
冷や汗が出る。看護師への指示も、少し感情的になる。
やばい死ぬかもしれない、と思う。
逃げ出したい!と思うけど、そこは深夜の病院。
医者は自分だけ。残念ながら逃げられない。

深呼吸をして、もう一度はじめから検索し直す。
すると一箇所、胃体上部後壁から小さな出血点が見つかる。
HSE局注をするも、止まらない。
クリップを2個かけても止まらず、3個目でようやく止血。
少しずつ血圧が上がってくる。

自分の中のアドレナリン分泌はすごい事になっているので、
処置が終わっても、実は全く疲れは感じない。
ドキドキしたまま、帰路につく。
こういう日に独りで飲むビールは、格別。

しばらくしてアドレナリンが切れて、
深い眠りに入る。
夢は見ない。