夢見る医者は オペ室に眠る

あれは最高のおっぱい

オペ室に眠る

死に際

ここ数ヶ月、いくつか人の不幸が重なっていた。お世話になった若い上司が危篤になり、癌で死ぬって、こんなに悲惨なのかと震撼した。 電話をすると、泣きながら、最期の晩餐を作っていた。 何も出来ず、申し訳なく思った。最期に声を聞いてから11日後に永眠…

外科志願者たち

外科に全く興味を持っていなかった研修医が、なんと2人も、外科に興味を持ち始めてくれた。こんなに嬉しいことは無い。 「心配なのは、俺、先生みたいに体力ないんです」と言われたのはさらに驚きだった。体力の無さがコンプレックスだったくらいなので。 し…

静かな甘え

年上の女が、友人を連れて遊びに来た。初めて酔っ払った彼女を見た。床に寝転がった彼女は、静かに甘えてきた。何も語らず、ほとんど動かず、静かに握った指先だけ動かしていた。 女の友人と締めの薄いビールを飲んでいたら、とっくに終電が終わっていて、結…

逃げ回るしか

友人が務める総合病院では、感染疑いのスタッフとの濃厚接触を理由に医療スタッフ数十名が出勤停止となった。自分が働く総合病院も、ついに医療スタッフからCOVID-19陽性患者が出た。病棟閉鎖、外来閉鎖、待機的手術中止も時間の問題か。あっという間に全国…

会話できる最後のチャンス

突然の心肺停止。慌てて心肺蘇生を開始したけど、pH 6.4, K 7.4。救命は厳しいだろうと思ってた。しかし予想に反し、見事心拍再開、しかも意識も戻った。こんな症例初めてだった。 主治医に引き継いだら、なんと抜管された。確かに呼吸状態は安定していたけ…

そんな彼はそろそろ結婚

心臓血管外科に、同期が一人いる。最近、よく併診患者を持って、たまに二人で開腹したりするんだが、同期ってだけで、なんとも仕事が楽しい。なぜだかお互い敬語なんだけど、お互いが認め合ってる証拠なんでしょう。ちなみに、彼の方が給料が良い! なお、我…

本音では誰も診たくない

新型コロナ(COVID-19)。現場は大混乱。何科がファーストタッチするかで、まず揉めた。「我々内科医だけが危険に晒されるのか」その訴えは、よく理解出来る。でも、手術の合間に肺炎なんか診たくないぜ…。 おそらく感染力に限って言えば、史上最強。どの施…

今日のクラシック

久しぶりに、良い緊急手術だった。夜8時。上司に助手に入ってもらう。腹を開けた瞬間、「間に合った!」と、上司と口を揃えてしまった。明日になったら、術式が変わってしまっていた。最近は、この治療は患者のためになっているのかと自問自答せざるを得ない…

自分の為なのです

バタバタと患者が死んでいった悪夢期間が一段落し、最近は、病棟も外来も落ち着いてきている。 「医者の生きがいは、患者からの感謝だ」なんて誰かが言ってるのを聞いて、そんなの綺麗事だろ、と思ってた。でも実際に、外来患者に「先生のお陰です」「しつこ…

カラッとした日

ラジオを止めた。車内が突然静かになる。窓を少し開けて、東京の自宅に向かう。いつもの道路を通っていて、こんなに静かな道だったんだと初めて気づいた。小鳥のさえずりも聞こえた。 鎮静開始して、しばらくして亡くなった。癌の進行も予想通り早かったし、…

プロですから

患者が死んだくらいでは、さして自分の感情は乱れないと思ってたけど、古くから診ていた思い入れのある患者だとそうも行かない。特に、その患者が若かったりすると尚更。 彼はあと数日。ここまで来るともう頑張る必要もない。鎮静を深くしたので、今日からも…

深い眠り

深夜の吐血対応は、修羅場になる事が多い。あっという間にショックバイタルになるので、全開の輸液・輸血、同時に緊急内視鏡をやる。床とスタッフは血まみれ、その場はまさに戦場のようになる。 そっと胃カメラを入れると、胃の中は血の海。だから、どこから…

セクハラの自覚

器械出しの若い看護師(女)が、頭を抱えながらセクハラ指導マニュアルらしき紙を読んでいた。 「恋人の有無に関して聞く…」「必要以上のボディータッチをする…」「自分の性生活について話す…」「ヤバい、全部〇〇くん(後輩)にやってる…」

ロンサーフ頼り

先日、40代の末期癌の患者が、抗癌剤をやって欲しいと懇願してきた。ただ、全身状態が悪すぎて、すでに抗癌剤を使える状況ではなくなってしまった。「先生の事は、全面的に信頼しています」っていう患者の言葉が頭をよぎって、罪悪感にかられる。

今日はもう満床

こういう雪の日に当直をしていると、転倒した高齢者が大量に搬送される。同時に救急車数台来たりすると、少し慌ただしくなる。大体みんな骨折していて、整形外科入院とする。 で、たまにその中に、ただの酔っ払いとかが紛れていると、とんでもなく腹が立つ。…

安楽死との違い

いつの話だか。研修医の頃だから、遥か彼方昔。ずっと大切に担当していた若い患者が、ついに治療に耐えかねて鎮静を希望された。癌の肺転移だから、苦しくて苦しくて仕方なかったと思う。鎮静開始の指示を出す事に、悩みは無かった。今まで散々向き合ってき…