夢見る医者は オペ室に眠る

あれは最高のおっぱい

昔話

かつての武勇伝ばかりを語る上司がいた。
彼の武勇伝を聞きながら、
目の前の薄毛で小太り、
職場でもまるで人気がないその上司を、
内心、ひどく哀れんでいた。

かく言う自分も、昔話ばかり書いている。
今の生活に満足していないからなのか。
いや、満足はしているし、
毎日何かしらの発見があって楽しい。
少なくとも、今は生活環境は良い。
でも、ふとした時間に、なぜか思い出してしまう。
今の生活に満足していないからなのか。

夕日の中を走る

4月に入って、少し立場が変わった。
自分自身は何も変わっていないのに、
少し仕事が増えた。
くそぅ。

月に一度ほど行く埼玉の奥地にある外勤先には
普段は電車で向かっていたが、今回は車で行った。
交通量は少ない。
田んぼに挟まれた車道を走っていたら、
夕焼けの向こうに地平線が見えた。
愛車のシートに腰を沈めて、
ニュースを流しながら、夕日の中を走る。
こうしていると騒がしいニュースが他人事のようだけど、
職場に付けばまた最前線に引き戻されてしまう。
車の中が、一時の安らぎ。

このご時世、気軽に外出も友人との会食も出来ない。
皆、どこで何をしているんだろうか。
達者で生活しているんだろうか。

逃げ回るしか

友人が務める総合病院では、
感染疑いのスタッフとの濃厚接触を理由に
医療スタッフ数十名が出勤停止となった。
自分が働く総合病院も、ついに
医療スタッフからCOVID-19陽性患者が出た。
病棟閉鎖、外来閉鎖、待機的手術中止も時間の問題か。
あっという間に全国の医療体制が大幅に縮小する。
株価は一時的に上がっているけど、
嵐の前の静けさを、ひしひしと感じる。
そんな現場と対象的に、東京は花見で賑わっている様子。

今は逃げ回るしかないのでしょう。
ワクチン完成まであと1年以上。
延期になったオリンピックは、
果たして本当に延期で出来るのか。

嫉妬だった

重い足取りで病棟に向かった。
病棟は真っ暗なのに対し、ナースステーションだけが、
白い蛍光灯に照らされ不気味に明るい空間を造っている。

夜中1時。
ちょうど準夜勤と夜勤のナースが引き継ぎをしていて、
少しだけ賑やかだった。

話しかけていたリーダーナースの奥から、
横目で自分を見ているナースがいることにはすぐに気づいた。
一瞬だけ目が合うと、そのナースは少し目を細めた。

会話できる最後のチャンス

突然の心肺停止。
慌てて心肺蘇生を開始したけど、pH 6.4, K 7.4。
救命は厳しいだろうと思ってた。
しかし予想に反し、見事心拍再開、しかも意識も戻った。
こんな症例初めてだった。

主治医に引き継いだら、なんと抜管された。
確かに呼吸状態は安定していたけど、
急変した直後の不安定な状況で抜管って、
自分が主治医だったら絶対にやらない。
さっさと鎮静かけて、ICU管理する。
しかも、時は夜。
でも、その主治医は、抜管した。

ご家族がそろって、数時間して患者は亡くなった。
でも、それが主治医の意図だった。
患者家族には、今が本人と話せる最後のチャンスです。
今抜管しなければ一生会話出来ません。
そう伝えていた。

こういう医療もあるのか、と
学ばせていただいた。
勉強し直す。

ちょっと勝った

他人のことを陰で責めている間は
一時的に自分が偉くなった気になるので
気持ちが良いだろうなぁとは思う。
けど、とばっちりを受けて責められたこちらは、
それを理解は出来ていても、
しばらく心に凝りとして残る。

そんな心の葛藤を理解してくれる
職場の上司や同僚がいるのは、非常に心強い。

やや乱れた心のはけ口を探して、
株を買ってみた。
自分の心以上に乱高下しておる。
さらにざわついてしまった。

医者の落とし方 02

医者の落とし方。
もしあなたが、心臓外科医を狙っているなら。

かなり難しい。
多忙な外科系の中でも、超多忙。
ほぼ家に帰らず、ずっと手術をしています。
彼が医師になってから出会ったとしても、
デートが出来ないのでまず落とせません。
医師になる前からツバを付けておき、
彼に負けないステータスを付けてから、
大きな器でふと再開した際に、
勝利のわずかな光が見えてきます。
なお、奇跡的に落とせたとしても、
家庭的な生活は望めません。
嫉妬心や束縛願望がある方は、まず上手くいきません。