夢見る医者は オペ室に眠る

あれは最高のおっぱい

誑かされた学生時代

カメラを向けると、
その子も“照れ隠し”で、自分にカメラを向けた。
自分が撮った写真を見返すと、
買ったばかりの一眼レフを
自分に向ける彼女が写っている。
まだ使い方も良くわかっていない様子。

渋谷、無国籍通りの一角にある小さなレストラン。
壁にはLautrecのポスター。お洒落だ。
白熱灯が、彼女の真っ直ぐな長髪と、
カメラの設定画面を覗き込む姿をぼんやり照らす。
幸いなことに、その暗い空間でも、
F 1.2のレンズが、良く描写してくれた。
暖かく静寂な空気感が(実際には静寂では無いが)、
我ながら良く切り取れていたと思う。

「あなたと結婚したい」なんて冷やかされて、
本気になってしまった事があるけど、
あの子、今何してるんだろうか。
噂によると、結婚して子供もいるらしい。

「偉くなって見返してやる」
「10年後、覚えてろよ」
と、当時学生だった自分の日記に書いてあった。
10年経ってしまった。

それと、今思い返すと、
あれは照れ隠しじゃなくて、
普通に撮られるのが嫌だったのだろう。